キッチンの床と壁の隙間や、システムキッチンの足元から水が漏れている場合、排水管や給水管からの直接的な水漏れを疑うのが一般的ですが、意外な盲点となるのが「コーキングの劣化」です。コーキングとは、シンクとワークトップ(天板)の接合部分や、壁付けキッチンの場合の壁とワークトップの間、あるいはワークトップとコンロの隙間などに充填されているゴム状の防水材のことです。このコーキングが、キッチンでの水の浸入を防ぐ重要な役割を担っています。しかし、このコーキング材も永久的なものではなく、長年の使用や、洗剤・油汚れの影響、温度変化などによって徐々に劣化していきます。劣化が進行すると、コーキング材が硬化してひび割れたり、痩せて隙間ができたり、あるいは剥がれてしまったりします。すると、その隙間から、シンク周りで使った水や、調理中にこぼれた液体などが、知らず知らずのうちに侵入してしまうのです。侵入した水は、ワークトップの裏側を伝い、キャビネットの内部や、さらには床下へと流れ込みます。そして、最終的に床と壁の隙間や、巾木と床の隙間などから、水漏れとして表面に現れてくるのです。この場合、給排水管自体には問題がないため、シンク下を点検しても直接的な水漏れ箇所が見つからず、原因の特定が難しいことがあります。コーキングの劣化による水漏れを防ぐためには、定期的な点検とメンテナンスが重要です。シンク周りや壁との接合部分のコーキングに、ひび割れや剥がれ、カビなどが発生していないかを目視で確認しましょう。もし劣化が見られる場合は、古いコーキング材をカッターナイフなどで丁寧に取り除き、新しいコーキング材を充填し直す「コーキングの打ち替え」を行う必要があります。DIYで行うことも可能ですが、きれいに仕上げるにはある程度の技術が必要ですし、防水性を確保するためには適切な種類のコーキング材を選び、隙間なく充填することが重要です。自信がない場合は、専門の業者に依頼するのが確実です。たかがコーキングと侮らず、その劣化が思わぬ床下水漏れに繋がる可能性を認識し、早めの対処を心がけることが、キッチンを長持ちさせ、快適に使い続けるための秘訣と言えるでしょう。