長年、マンションのリフォームに携わっていると、トイレ工事においてお客様が陥りやすい「落とし穴」のようなものが見えてきます。事前に知っておけば避けられることも多いので、いくつかご紹介したいと思います。まず、意外と見落としがちなのが「搬入経路」の問題です。新しい便器や内装材を運び込む際、マンションのエレベーターのサイズや廊下の幅、玄関ドアの大きさによっては、希望する製品が搬入できないケースがあります。特に大型の便器や一体型のカウンターなどを検討している場合は、必ず事前に業者に搬入経路を確認してもらうことが重要です。次に、「水圧」の問題。特にタンクレストイレを希望される場合に注意が必要です。タンクレストイレは水道直結式のため、ある程度の水圧がないと十分な洗浄能力を発揮できません。高層階や古いマンションでは水圧が低い場合があり、設置したものの流れが悪い、といったトラブルにつながることがあります。事前に自宅の水圧を測定してもらい、設置可能かどうかを確認する必要があります。水圧が低い場合は、専用のブースター(加圧装置)付きのタンクレストイレを選ぶか、従来型のタンク式トイレを検討することになります。また、「排水管の位置や種類」も重要なポイントです。マンションの排水管は、床下を通っている場合(床排水)と、壁の中を通っている場合(壁排水)があります。リフォームの際には、既存の排水管の位置に合わせて便器を選ぶ必要があります。大幅な配管の移動は、構造上の問題や管理規約によって制限されることがほとんどです。特に壁排水の場合は、対応する便器の種類が床排水に比べて少ない傾向にあるため、選択肢が限られる可能性があります。さらに、「管理規約」の確認不足もトラブルの原因となりがちです。床材の遮音等級に関する規定や、工事可能な曜日・時間帯の制限など、マンションごとに独自のルールが定められています。これを確認せずに工事を進めてしまうと、後で管理組合から指摘を受けたり、近隣住民とのトラブルに発展したりする可能性があります。必ず事前に管理規約を確認し、必要な申請手続きを行うようにしましょう。これらの点は、経験豊富なリフォーム業者であれば当然把握しているはずですが、お客様自身もある程度の知識を持っておくことで、よりスムーズで安心なリフォームを進めることができます。
プロが語るマンションのトイレ工事の落とし穴