それは、ある平日の夜のことでした。夕食後、キッチンで洗い物を終え、シンクの水を流すと、ゴボゴボという嫌な音と共に、水の流れが明らかに遅くなっていることに気づきました。「まさか…」という不安がよぎりましたが、その日は疲れていたこともあり、「少し様子を見よう」と軽く考えてしまったのです。しかし、翌朝、その考えが甘かったことを思い知らされます。顔を洗おうと洗面所の蛇口をひねると、水はすぐに洗面ボウルに溜まり始め、全く流れていかないのです。昨夜のキッチンの異変は、排水管全体の深刻な詰まりの前兆だったのです。完全に流れなくなった排水溝を前に、私は軽いパニックに陥りました。すぐに頭に浮かんだのは、市販のパイプクリーナーです。以前、軽い詰まりならこれで解消した経験があったからです。近所のドラッグストアに駆け込み、一番強力そうな液体パイプクリーナーを購入。帰宅後、説明書をよく読み、洗面所の排水溝に規定量を注ぎ込みました。ジェル状の液体が、ゆっくりと排水溝の奥へと消えていきます。「これで溶かしてくれるはずだ…」と祈るような気持ちで、指定された30分間を待ちました。時計の針がやけに遅く感じられます。そして、いよいよ運命の時。おそるおそる蛇口をひねり、水を流し込みます。最初は少し流れが悪いように感じましたが、徐々に「ゴボゴボッ」という音と共に、水が勢いよく吸い込まれていくではありませんか!「流れた!」思わず安堵の声を上げました。念のため、キッチンとお風呂の排水溝にも予防的にクリーナーを使用し、その日は事なきを得ました。今回の経験で、排水溝の詰まりがいかに突然訪れるか、そしてそれを放置することの恐ろしさを痛感しました。そして、市販の薬剤が、いざという時に頼りになる救世主であることも再認識しました。とはいえ、詰まってから慌てるのではなく、日頃からの予防が何より大切だと、肝に銘じた一日でした。これからは、定期的なパイプクリーナーの使用を習慣にしようと、固く心に誓ったのでした。