排水口の流れが悪い時、多くの人が最初に試す液体パイプクリーナー。しかし、それで解決しない場合に安易にワイヤー式クリーナーに手を出すのは、実は非常に危険な行為だと、この道20年のベテラン水道職人、高橋さん(仮名)は警鐘を鳴らします。葛城で水もれ修理を配管交換すると、家庭でできるパイプ詰まり対処法の限界と、その先に潜むリスクについて、プロの視点から語っていただきました。 「まず大前提として、市販の液体パイプクリーナーは、あくまで『予防』や『ごく軽度の詰まり』を解消するためのものだと考えてください」と高橋さんは言います。「主成分の水酸化ナトリウムは、髪の毛や皮脂、石鹸カスといったタンパク質系の汚れを溶かすのには効果的です。しかし、長年かけて排水管の内側にこびりつき、硬化したヘドロの塊や、油が冷えて固まった油脂の塊に対しては、表面を少し溶かす程度で、根本的な解決には至らないことがほとんどです。守口では排水口専門チームから修理するには何度使っても改善しないのは、あなたの使い方が悪いのではなく、クリーナーの能力の限界を超えた、より深刻な詰まりが発生しているサインなのです」 では、液体クリーナーが効かない場合、次にワイヤー式クリーナーを使うのは有効な手段なのでしょうか。この問いに対し、高橋さんの表情は厳しくなります。「正直に言って、一般の方が家庭用のワイヤー式クリーナーを使うのは、あまりお勧めできません。我々プロが使う『トーラー』という電動式のワイヤー機器とは全くの別物で、家庭用のものはワイヤーが細く、強度も弱いため、様々なリスクが伴います。最も多い失敗例が、ワイヤーを無理に押し込んだ結果、排水管のS字トラップなどのカーブ部分でワイヤー自体が折れ曲がったり、絡まったりして抜けなくなるというトラブルです。詰まりを解消しようとして、今度はワイヤーが詰まるという、最悪の二重苦に陥ってしまうのです」 さらに、高橋さんは物理的なダメージのリスクについても指摘します。「家庭用の排水管は、多くが塩化ビニル製です。特に築年数の古い建物では、配管自体が経年劣化で脆くなっていることも少なくありません。そこに金属製のワイヤーで強い力をかければ、管の内側を傷つけたり、最悪の場合は穴を開けてしまったりする危険性があります。そうなれば、床下への水漏れという、詰まりとは比較にならないほど深刻で、高額な修理が必要な大惨事を引き起こしかねません。また、固形物が詰まっている場合にワイヤーを使えば、それをさらに奥へと押し込んでしまい、状況を悪化させるだけです。落とした物の心当たりがある場合は、絶対にワイヤーを使わないでください」 では、私たちはどうすれば良いのでしょうか。「液体クリーナーを、製品の用法・用量を守って一度か二度試してみて、それでも改善が見られない場合。それが、我々プロを呼ぶべき明確なサインです。我々は、業務用の高圧洗浄機で配管内部の汚れを根こそぎ洗い流したり、先端に様々なアタッチメントを付けたトーラーで詰まりを確実に破壊・回収したりと、建物を傷つけることなく安全に問題を解決する技術と機材を持っています。お客様が数時間格闘しても解決しなかった詰まりが、我々の手にかかれば15分で解消することも珍しくありません。DIYで悪戦苦闘する時間と、事態を悪化させるリスクを考えれば、最初から専門家に任せていただくのが、結果的に最もコストパフォーマンスが高い選択だと断言できます」 高橋さんの言葉は、安易な自己判断の危険性と、プロの技術の価値を明確に示しています。排水管の詰まりは、私たちの手に負えない「病気」のようなもの。家庭薬(液体クリーナー)で治らないなら、迷わず専門医(プロの業者)の診断を仰ぐ。その冷静な判断こそが、私たちの快適な水回り環境を守るための、最も重要な心構えなのかもしれません。
プロが語るパイプクリーナーの限界とワイヤーを使う前の「警告」