薬剤で溶かせない排水溝詰まりとその末路
排水溝が詰まった時、多くの人がまず試すのが市販のパイプクリーナーでしょう。しかし、世の中には薬剤では決して溶かすことのできない詰まりも存在します。そして、それを無理に溶かそうとしたり、放置したりした結果、取り返しのつかない事態を招くこともあるのです。薬剤で溶かせない詰まりの代表例は、「固形物」によるものです。例えば、子供がおもちゃを流してしまったり、歯ブラシやカミソリのキャップ、アクセサリーなどを誤って落としてしまったりするケースです。また、キッチンの排水溝に、野菜のヘタや魚の骨、大量の食べカスなどを一度に流してしまうことも、物理的な詰まりの原因となります。これらの固形物は、化学薬品では分解・溶解することはできません。むしろ、無理に強力な薬剤を使用すると、薬剤が固形物の周りに溜まってしまい、配管を傷めたり、有毒ガスが発生したりするリスクを高めることになりかねません。もう一つ、薬剤での溶解が難しいのが、長年にわたって蓄積し、石のように硬化してしまった油脂や尿石などの汚れです。これらは、市販のクリーナー程度では表面がわずかに溶けるだけで、根本的な解決には至らないことがほとんどです。では、これらの「溶かせない詰まり」を放置すると、どのような末路を辿るのでしょうか。ある集合住宅での事例です。住人のAさんは、キッチンの排水の流れが悪いことに気づきながらも、「そのうち直るだろう」と数ヶ月放置していました。市販のパイプクリーナーを何度か試しましたが、効果はありませんでした。ある日、階下の住人から「天井から水漏れがしている」と連絡があり、慌てて業者を呼んで調査したところ、Aさん宅のキッチン排水管が完全に詰まり、接続部分から汚水が漏れ出していたことが判明しました。詰まりの原因は、長年蓄積して硬化した油脂の塊と、そこに引っかかったと思われる小さなプラスチック片でした。薬剤では溶かせず、物理的に除去するしかありませんでしたが、発見が遅れたため、漏水によって床材や階下の天井にまで被害が及び、修理費用は数十万円にも上りました。排水溝の詰まりを感じ、市販の薬剤を試しても改善しない場合は、「何か溶けないものが詰まっているのではないか」「詰まりが深刻化しているのではないか」と疑うことが重要です。